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夢(Dream・Träumerei)

  • 2012/01/19 14:25

 "I Have a Dream" 「私には夢がある」その有名な言葉を残したマーティン・ルーサー・キングJr.(Martin Luther King,Jr)は、1963年8月28日に行われたワシントン大行進において、リンカーン記念堂の前に立ち、人種差別の撤廃と各人種の協和という高邁な理想を訴えました。後にその内容は高く評価され、ジョン・F・ケネディの大統領就任演説と並び、20世紀のアメリカを代表する名演説と称賛されます。

 人種の平等を叫ぶ彼の演説の中で、「今日この神聖な場に集まったもう一つの目的、それはアメリカが今すぐ取り掛からなくてはならない課題を社会に提起することにあります。もう頭を冷やせなんて贅沢をいっている場合ではないのです。ゆっくりやればいいなどと気休めを言っている暇はない。Now is the Time.」と云う言葉をもって、実行力の発揚を行いました。

また、「この差し迫った課題をウヤムヤにすることは、国家の存亡に係わる由々しき問題です。」と云う言葉をもって、現実を直視する勇気の必要性を強調しました。
 当時はアメリカが経験した暗澹たる時代で、人種差別問題、泥沼のようなベトナム戦争等、人々は絶望感を抱き、肩を落とし、苦しみに喘いでいました。その人々に向って容赦ない痛烈なメッセージが投げかけられたのですから、通常ならば聴衆は、黙して語ることができなかったのではないでしょうか。

しかし、結果はそうではありませんでした。17分間の演説の全編を通して、彼は"I Have a Dream" 「私には夢がある」と云う言葉を何度も繰り返しました。
 その言葉によって、聴く人々はうつむいた顔をあげ、集ったおよそ25万人は、大きな歓声を上げて、深い感動を分かち合うことになるのです。
 I Have a Dreamという一言に、人々は「神の御救い」を実感したのではないでしょうか。

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ドイツの作曲家、音楽評論家、ロマン派音楽を代表する人物の一人であるロベルト・アレクサンダー・シューマン(Robert Alexander Schumann)は、1838年(28歳)に「子供の情景」という13曲からなる小品集を作曲しました。ロイメライ(夢) Träumereiは、その中の7曲目に入っています。この作品は、シューマンのピアノ曲の中で、最も有名であり、後に彼の妻になるクララに宛てた手紙では「この曲は平和に満ち、柔和で幸福であり、あなたの将来のようです。」と書いているそうです。

 Träumereiとはドイツ語で、「夢を見ること」の意味を持っています。この時代(ベートーヴェン没後)の西洋音楽は、ロマン派時代に入っています。シューマンの音楽史上の業績は、特に文学(詩)と音楽の融合を実現したことにあります。専門的には「標題音楽」と呼ばれるジャンルで、人の内面性を見事に音描写することに成功しました。

この名曲の美しい調べは、Träumereiという言葉(ロゴス)では到底言い現わすことができない「夢見心」を、余すところなく表現しています。そして、愛情に満ちた美しい調べにのせて、私たちに平和・柔和・憧れetc.の香を運んできます。その調べに耳を傾けていると心が透き通っていくような思いがします。

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 誰でも「夢」を語る時に、その瞳は輝き、笑顔がこぼれますね。私は信じます。「夢」とは「希望」の具体的な姿であり「夢」のあるところには必ず「善き力」と「友愛」とに裏付けされた「成長」があるということを。

 目を転じて、聖書には希望はどんな事に対しても勝利することが、この様に明確に記されています。「そればかりでなく、苦難をも誇りとします。私たちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を練達は希望を生むということを。希望は私たちを欺くことはありません。私たちに与えられた聖霊によって神の愛が私たちの心に注がれているからです。」
                    新約聖書「ローマの信徒への手紙5章3-5節」

 御承知のように、現在、我が国に真っ暗な影が投げ落されています。
 この先、日本の行方はどうなってしまうのか、全く見通しが立たない、深くて大きな不安の渦に呑みこまれています。
 その中にあっても、無限の可能性に満ちた子どもたちを育てていこうとするときに、私たちは、「如何にして彼らの未来を保証することができるか」ということを、常に問い続けねばなりません。  
 何時如何なる時においても、心に美しく豊かな音楽の調べをもちつつ、「私には夢がある。神と人とに愛される、このような子どもを育てたい。」と言い切ることができる、そのような大人でありたいと願います。

園長 田 中 秀 一


                                          2011年9月

キリスト教保育連盟

「ともに育つ」巻頭言寄稿文

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